不動産売却における権利証とは?紛失した際の売却方法や注意点を解説

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ユキ地物 WEB担当者  

筆者 ユキ地物 WEB担当者  

不動産キャリア42年

不動産売却における権利証とは?紛失した際の売却方法や注意点を解説

所有している不動産を売却するときに必要な権利証は、再発行ができないため大切に管理しなければなりません。
しかし取得してから何十年も経つと、保管した場所を思い出せずに紛失してしまうケースもあるため、万が一のために代替措置を知っておく必要があります。
本記事では、権利証(登記済証)とは何かお伝えしたうえで、紛失した場合の売却方法と注意点を解説します。

権利証(登記済証)とはなにか

権利証(登記済証)とはなにか

不動産売却では、売買契約と金銭の取引が完了すると、不動産の所有権を売主から買主に移転させます。
そのときに必ず必要になる書類が、土地や建物を所有していると証明するための唯一の書類である権利証です。
正式名称は登記済証で、権利証はあくまで一般用語として使われています。
不動産の所有権を明確にするための不動産登記法は明治32年に施行され、平成17年3月7日を境に書類の内容は改正され、現在は登記識別情報として交付されています。
登記識別情報は新旧どちらも書類に記載されている登記名義人が不動産の所有者として認められ、不動産売却の意思を表明できる立場です。
旧権利証(登記済証)は、和紙に不動産情報・法務局が押した「登記済」の朱印・所有権移転登記をした日付・受付番号が記載されて交付されました。
昔は重要書類に威厳を持たせる目的で、司法書士事務所の専門家が毛筆を使って表紙・外装を作成していたケースも多いです。
一方で新権利証(登記識別情報)は、A4サイズの紙に不動産情報・登記識別情報(12桁のアラビア文字・記号)が記載されて交付されます。
登記識別情報は、所有者として認められた申請人によって異なります。
現在は個人情報を保護する目的で、登記識別情報の部分は目隠しシールで隠されており、記載された内容を見るためには目隠しシールを開封しなければなりません。
目隠しシールは、一度開封すると再び隠せない仕様になっているため、厳重な管理が必要です。
なお、平成27年以降は、目隠しシールの代わりに袋とじされて登記識別情報が隠れるように改良されました。
不動産売却をする際には、売買契約が成立したあとの決済日に権利証を用意するように求められます。
当日は司法書士同席の元、売主から買主に所有権の登記変更をするのに問題がないかを確認してもらい、金銭の取引がおこなわれます。
そのため、不動産購入などで土地や建物の所有権が移ったときに取得する権利証は必ず大切に保管しましょう。
原則として、権利証を紛失しても再発行できません。
再発行はできないものの、代替措置を利用し不動産の所有権を証明すれば不動産売却は可能です。
ちなみに、自宅に泥棒が入ったなどの理由で第三者に利権証が渡ったら「不動産を乗っ取られるのでは?」と不安視する方がいますが、利権証のみでは売却できないため安心してください。

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権利証を紛失した場合の売却方法について

権利証を紛失した場合の売却方法について

不動産売却は、土地や建物の所有権を持っている方しかできないため、権利証を提出して証明しなければなりません。
基本的に権利証の再発行はできないため、管理している場所が分からない場合は、探しましょう。
どうしても権利証を見つけられない場合は、事前通知制度・司法書士・公証人の3つの代替措置を使って、本人確認をおこなったうえで不動産の所有権を証明できます。
事前通知制度は、不動産の所有者が権利証の紛失などの理由で登記識別情報を開示できない場合に登記官が本人確認をおこなう代替措置です。
権利証が見つからない場合、法務局に対して紛失した旨を申請すると登記官が申請者と不動産の所有者の情報に間違いがないかを精査します。
情報が一致すれば、申請に対して本人確認の通知が送られます。
期間内に返答があれば正常に本人確認が終了したため不動産売却ができますが、期間内に返答がなければ本人確認が認められていないため不動産売却ができません。
司法書士による本人確認は、不動産登記法の第23条第1項によって認められた代替措置です。
不動産を購入・相続したときに所有権移転登記の手続きを代理で務めた司法書士であれば、法務局の代わりに法務省令の規定に合わせて本人確認ができます。
ただし、司法書士であれば良いわけではなく、所有権を取得したときの登記をおこなった代理人兼司法書士でなければなりません。
公証人による認証は、不動産登記法の第23条第2号によって認められた代替措置です。
公証人役場に申請すると、不動産の所有権に関する情報を記載・記録した書面もしくは電磁的記録を法務省令の規定に合わせて公証人が本人確認をおこないます。

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権利証を紛失したときの手続きの注意点について

権利証を紛失したときの手続きの注意点について

権利証を紛失したときに事前通知制度もしくは司法書士・公証人による本人確認を利用するのが一般的ですが、手続きの過程では主に3つの注意点をおさえておく必要があります。
まず、第三者への不動産売却を検討している場合は、事前通知制度を利用するのはむずかしいです。
売却活動を始めるうえで、早い段階で不動産会社から必要書類の説明を受けて、権利証の紛失が発覚したとしても所有権移転登記をする予定がなければ事前通知制度は利用できません。
金銭的な取引が終了して売買契約が成立して、正確に所有権が移転するとなった時点で法務局の登記官に本人確認を依頼するのが一般的な流れです。
通常の取引であれば、売買契約をする日に購入資金の支払いと不動産の登記をおこないます。
先に不動産の登記をした場合は買主が購入資金を払わなくても法律上は不動産の所有権は買主となり、先に支払いが完了した場合は売主が登記転移をしなくても法律上は不動産の所有権は売主となります。
つまり、売買契約をして購入資金を支払ったあとに事前通知制度を利用するのは、買主側に大きなリスクがあるため敬遠されるケースが多いです。
続いて、司法書士による本人確認を利用するのであれば、必ず当該所有権移転登記手続きを代理で委任された司法書士に依頼しましょう。
司法書士であれば本人確認ができるわけではなく、売買契約をする日に本来であれば提出する予定であった権利証を確認する予定の司法書士でなければ本人確認は認められません。
一般的な第三者間の売買取引であれば、買主側が雇った司法書士が所有権移転登記をおこないます。
つまり、費用削減のために身内や知り合いなど司法書士の本人確認は無効となる可能性があるため、不動産会社を通して当該所有権移転登記手続きをする司法書士を確認しましょう。
最後に、公証人による本人確認を利用するのであれば、決済後に関係者が公証役場に行く必要があり手間がかかるため合理的とはいえません。
不動産の購入資金の支払いは、安全性と手間を考慮したうえで、買主側が金融機関を指定します。
権利証があれば司法書士に内容を照会してもらって支払いが済めば手続きが完了しますが、公証人による本人確認は決済後に追加の手間がかかります。
不動産売却で多くの手続き作業があるため、権利証の代替措置の手続きを最小限に抑えたいのであれば公証人による本人確認は避けるのが賢明です。
結論として、第三者に不動産売却をするのであれば売買契約で同席する司法書士に本人確認をしてもらうのがもっとも正確で手間がかかりません。
一方で不動産を身内に贈与するのであれば、双方で信頼関係ができあがっているため、事前通知制度を利用しても問題ないでしょう。

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まとめ

不動産売却をするうえで、不動産の所有権を証明するための権利証は必ず必要なため、大切に保管しましょう。
紛失してしまっても再発行はできませんが、代替措置を使えば所有者との本人確認をおこなえるため、書く方法で手続きをすれば問題ありません。
代替措置によっては手間や費用がかかるため、第三者に売却するのであれば司法書士による本人確認、身内への贈与・売却であれば事前通知制度の利用がおすすめです。


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