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相続税は「小規模宅地等の特例」を利用して節税できる!適用要件などを解説

不動産

ユキ地物 WEB担当者  

筆者 ユキ地物 WEB担当者  

不動産キャリア42年

相続税は「小規模宅地等の特例」を利用して節税できる!適用要件などを解説

親が亡くなり相続が発生すると、受け取る財産の評価額に応じて相続税が課せられます。
財産の価値が高ければ相続税も高額になりやすいため、不動産が含まれている場合は注意が必要です。
そこで今回は、不動産相続時に知っておきたい「小規模宅地等の特例」について解説します。
不動産を相続するご予定のある方は、ぜひ参考になさってください。

相続税に適用される小規模宅地等の特例とは?

相続税に適用される小規模宅地等の特例とは?

不動産を相続する際に、小規模宅地の特例を適用することで相続税の負担を軽減できます。
小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たした場合に、土地の評価額を8割減額できる制度のことです。
たとえば、評価額が3,500万円の土地を相続するケースで考えてみましょう。
3,500万円の80%は2,800万円なので、課税評価額は700万円(3,500万円-2,800万円)です。
課税標準額が小さくなると、そこに課税される相続税も低くなるため節税に繋がります。

小規模宅地等の特例が制定された背景

小規模宅地等の特例が生まれた背景には、土地価格の高騰による税金の負担が関係しています。
かつての高度経済成長期やバブル経済期には、日本各地で土地の価格が高騰し、それにより相続税も高くなりました。
自治体によっては、クレジットカード払いや電子決済も利用できますが、相続税は現金の一括払いが基本です。
何十万円から何百万円とする相続税をまとめて用意するのは難しく、土地を手放さざるを得なくなる方が増加しました。
土地の上に建物が建っていると残された家族は住む場所を失い、事業用の土地であれば家業を継続することができません。
こうした事態を回避し、相続人の生活を守るために生まれたのが「小規模住宅用地の特例」です。

相続税で知っておきたい小規模宅地等の特例の適用要件

相続税で知っておきたい小規模宅地等の特例の適用要件

小規模宅地等の特例が適用されるのは、以下のいずれかに該当する土地です。

●特定居住用宅地:自身が居住するために使っていた宅地など
●特定事業用宅地:貸付用を除き個人事業として使っていた宅地など
●貸付事業用宅地:貸付用としていた宅地(貸地または貸家など)
●特定同族会社事業用宅地:会社(同族会社)として使っていた宅地など


なお、小規模宅地等の特例には「適用面積」と「減額割合」に上限が定められています。
特定居住用宅地は330㎡まで(80%)、特定事業用宅地等および特定同族会社事業用宅地は400㎡まで(80%)です。
一方で貸付事業用宅地は200㎡まで(50%)で、他の2つに比べると割合が低くなっています。

相続人の適用要件

小規模宅地等の特例における適用要件は、相続人と被相続人の関係によっても異なります。
配偶者
被相続人の妻や夫は、無条件で小規模宅地等の特例が適用されます。
これは、相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)より前に不動産売却した場合も同様です。
被相続人の配偶者であれば、ほかの相続人とは異なり、期限に関係なく特例の適用を受けられます。
同居親族
相続発生時点において被相続人と同居していた親族を同居親族と呼びます。
同じ住所に住民票が登録されていることに加え、同居の実態がなければなりません。
同居期間に定めはないため、相続発生以前に同居を開始した場合にも特例の適用は受けられます。
しかし、相続税の申告期限までその宅地に住み続けていることが条件です。
たとえば、被相続人が亡くなる直前に同居を始め、すぐに元の自宅に戻るような場合は適用対象外です。
別居親族(家なき子特例)
すでに独立しているなど、同居していない親族が小規模宅地等の特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

●被相続人に配偶者もしくは同居する親族がいない
●相続開始前3年以内に一定の条件下にある持ち家に住んだことがない
●相続税の申告期限まで相続した宅地などを所有している


相続人自身だけでなく相続人の配偶者にも持ち家がないことが条件で、別居親族に対する適用は「家なき子特例」とも言われています。
2018年には特例の対象範囲が小さくなり、「3親等内の親族または相続人と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に住んだことがない」という条件も追加されました。
たとえば、親族名義の家屋に居住していたり関係会社の名義で購入したりした家屋の場合は、特例の適用対象外です。

不動産を売却する時期に注意

相続した不動産を売却する際は、タイミングにも注意が必要です。
配偶者以外の相続人が特例を利用するためには、相続税の申告期限までその宅地に居住していなければなりません。
被相続人の子どもや両親など、配偶者でない相続人が不動産を売却する際は、申告期限以降に売り出すようにしましょう。

相続税で小規模宅地等の特例を受ける際の注意点

相続税で小規模宅地等の特例を受ける際の注意点

小規模宅地等の特例を利用する際は、以下の点にご注意ください。

相続税の申告が必要

相続税には基礎控除額が設けられており、控除額を下回る際は相続税の申告は必要ありません。
基礎控除額を求める計算式は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で、法定相続人の数によって変動します。
たとえば相続人が3人であれば、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となり、相続税の総額が4,800万円を超えなければ相続税の申告は必要ありません。
しかし、小規模宅地等の特例を利用するためには相続税の申告が必要なので、忘れないようにご注意ください。

二世帯住宅の場合は登記の状況で判断する

二世帯住宅で親と暮らしている場合は、登記の状況によって「同居」を判断します。
二世帯住宅を2戸の住宅とみなし、親と子どもそれぞれが所有権を持っている場合は、被相続人と一緒に暮らしていないことになります。
居住スペースが1階と2階で分かれているなど、構造的に独立しているかどうかで判断されるわけではない点に注意しましょう。
ただし区分所有登記になっている場合でも、小規模宅地等の特例を適用できるケースがあります。
たとえば1階に両親、2階に子ども夫婦が住み、それぞれが区分所有登記をしているとしましょう。
浴室が2階にしかなく、親子で共有している場合は、2階部分も親の居住用であると認められる可能性があります。

遺産分割を終えている必要がある

小規模宅地等の特例を適用するためには、誰がどの財産を相続するのかを明確にしている必要があります。
そのため、遺産分割が成立していない状態では、小規模宅地等の特例を利用できない点に注意が必要です。
相続人同士で揉めているなど、何かしらのトラブルに発展している場合は、特例を適用する前の状態で相続税を納付します。
ただし、申告期限から3年以内に遺産分割協議が成立すれば、払い過ぎた相続税の還付を請求することが可能です。

相続開始前からの対策しておくことが大切

小規模宅地等の特例は、相続が発生した前後の状況によって適用の可否が判断されます。
相続発生後に適用する予定であっても、要件を満たさず利用できないこともあるでしょう。
損をしないためには、相続開始前から「どうすれば要件を満たせるのか」を理解しておくことが大切です。
「この場合でも特例を適用できるかな?」と疑問に思うことや不明点があれば、税理士などの専門家へ相談しましょう。

まとめ

不動産は高額な資産なので、相続財産に土地や建物が含まれていると、相続税が高くなる傾向にあります。
しかし一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例を利用することで相続税を抑えられるかもしれません。
賢く節税に繋げるためにも、特例の適用要件を事前に確認しておき、該当する場合は忘れずに申告をおこないましょう。


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